2013年4月19日金曜日

アドルフの画集

アドルフの画集
Max
2002年 ハンガリー・カナダ・イギリス 108分
監督・脚本:メノ・メイエス

1918年のミュンヘン。イープルの戦いで右腕を失ったマックス・ロスマンは古びた機関車工場を改造して画商を営んでいる。それもただの画商ではなくて、いきなりジョージ・グロスやエルンストの個展を開けるような画商なのである。そのマックス・ロスマンはある日、軍用外套をまとった小男の伍長アドルフ・ヒトラーと出会い、その作品を見て未来派に分類し、作者の肉声が聞こえてこない、もっと作品に自分をぶつけるんだと励ますが、最初の段階で批判を受けたことでヒトラーは自信を失い、画商に委託した作品が売れないまま手元に戻されたことで傷ついて、やがて画家の道からはずれ、パフォーマンス・アーティストとしての才能を開花させていく。
画家としてのヒトラーを主題にした風変わりな作品である。監督のメノ・メイエスは脚本家出身(『マーシャル・ロー』)。 芸術家や画商、あるいは観客の習性をそれぞれにうまく定着させて、その目配りのよさが面白い。つまり画家は画家らしく、画商が画商らしく、斜めに描かれているのである。美術なども凝っていて、実に地味な映画ではあるが、画面から目が離せなかった。一つだけ難点を挙げれば、ナチズムとの関わりを放置して済ませようとしたことであろう。デザイン面でもここだけ、身を引いたような痕跡が見えるのである。いっそ大きな改変を加えて、ハッピーエンドにするくらいの思いきりはほしかった。

Tetsuya Sato