2013年4月18日木曜日

アレクサンドリア

アレクサンドリア
Agora
2009年 スペイン 127分
監督:アレハンドロ・アメナーバル

テオンの娘ヒュパティアがアレクサンドリアの図書館で学生に教えていたころ、キリスト教徒の数が増えて異教に対する弾圧が強まり、キリスト教徒が異教の神々を侮辱すると図書館はキリスト教徒への報復をおこない、キリスト教徒は数を頼みに図書館を包囲し、テオドシウス一世の勅令によって図書館は破壊され、多くの者がキリスト教に転向し、それから数年後、アレクサンドリアの主教がキュリロスに変わると異教に対する弾圧が激しさを増し、ユダヤ人が追放され、事実上の教権政治が確立され、自宅にこもって地球の軌道を調べていたヒュパティアは庇護を失って教会の兵士に捕らえられる。
題材としては面白いし、内容もそれなりに面白いが、よくできたテレビ映画という水準であろう。ヒュパティアは哲学者として登場するものの、キリスト教の不安定な教権に対置される単純な表象として扱われ、思索的な面でいかなる対立があったのかは一度も示されることがない。わからないところではあるものの、ヒュパティアを持ち出すのであれば、まずそこを作り込むべきではなかったか。それができないのであれば、ヒュパティアをもっと後景に置くべきであった。
ヒュパティアがレイチェル・ワイズ。演出とはいえ、ヒュパティアの最期をきれいにかたづけすぎている。人物造形に単純さが目立ち、ダイアログに弱さが目立つ。ときどき衛星高度からアレキサンドリアを俯瞰したり、月よりも遠い場所から地球を眺めたりするが、意味がよくわからない。 




Tetsuya Sato