2015年4月18日土曜日

Plan-B/ 休暇

S4-E26
休暇
 男は十年ぶりの休暇を取って故郷の町に帰っていった。十年ぶりに見る故郷の町は十年前のままだった。店の様子が同じなら、走っている車も同じだった。十年ぶりに会う人々も十年前のままだった。なにかおかしい、と男は思った。はずれた場所にある保守的な土地で、どちらかと言えば変化に疎い傾向はあったが、それにしてもこれはおかしい、と男は思った。誰も歳を取っていない。女たちも変わっていない。十年前に十歳だった子供が十歳の姿のままでそこにいた。いよいよおかしい、と思いながら、男は実家の玄関に立った。父親も母親も十年前となにも変わっていなかった。音信不通だったことを咎めもしないで、男を家に迎え入れた。男の部屋もまったく変わっていなかった。母親の料理もまったく変わっていなかった。これはこれでけっこうなことだ、と男は思った。実を言えば、男も変わっていなかった。反社会的な気質も衝動的な性格も、そして暴力的な傾向も、十年前となにひとつとして変わっていなかった。町は十年前と同じだったが、十年前の男の姿を忘れていた。あるいは忘れたふりをしていた。これは、思い出させる必要がある。長い休暇になりそうだ、と男は思った。

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