2015年4月15日水曜日

Plan-B/ 小包

S4-E23
小包
 マニラ紙の小さな包みを郵便配達員が差し出していた。男は配達員の顔を見ないようにしながら受取証にサインして、ドアを閉じて鍵をかけた。包みをつかんで机に戻るとナイフを取って、包みにかかった紐を切った。二重になった包み紙を破っていくとボール紙の箱が現われた。男は箱を机に置いて、慎重な手つきで蓋を取った。おが屑のなかに三角フラスコが沈んでいた。フラスコの首をつまんで目の高さに持ち上げた。人間のような姿をした裸の生き物が入っていた。フラスコの首が細いので、生き物はそこから出ることができない。怒ったような目をしている。男がフラスコを軽く振ると、なかの生き物が転がった。男はアルコールランプに火をつけて、フラスコの底をあぶり始めた。生き物が熱さに苦しんでいる。火から離すと顔をゆがめて男をにらんだ。男はフラスコを机に置いて紙にペンを走らせた。溺れさせる。酸をかける。アルコールで溺れさせる。蠅と戦わせる。百足と戦わせる。ときどき顔を上げて、フラスコのなかの生き物を見た。紙に目を戻してはペン先を舐めて考えた。ふと見ると生き物がなにかやっている。どこから取り出したのか、小さなペンを小さな紙に走らせている。なにを書いているのか気になったが、生き物はからだで隠して見せようとしない。男はフラスコを逆さに持って強く振った。生き物の手から紙が離れて、フラスコの首に貼りついた。男はフラスコの口に目を近づけた。生き物は槍のようにペンを構え、男の目を狙って投げつけた。ペンが男の目に突き刺さり、フラスコは床に落ちて粉々になった。

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