S1-E27
|
道
|
寝坊をした。少年は鞄を背負って学校へ通じる道を急いだ。そこの角を曲がれば学校が見える。あと少しだ、少年はそう考えていつもと同じ角を曲がった。道いっぱいになにか奇妙なものがうごめいていた。どれもがドッジボールのボールほどの大きさでしかなかったが、大きく開いた口に意地悪そうな牙を並べ、棘の生えた背中を丸めて二本足で歩いていた。少年は足をとめて考えた。帰ろうか。でも母親の小言が怖かった。学校のほうからチャイムの音が聞こえてきた。どうしよう。どう考えても母親の小言のほうが怖かった。少年は足を前に踏み出した。ゆっくりと、気づかれないように、ゆっくりと。
Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.
Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.