2014年12月10日水曜日

Plan-B/ 害獣

S1-E22
害獣
 その小さな小屋で農夫は一人で暮らしていた。石が転がる小さな畑で野菜を育て、痩せた山羊に草を食ませ、自分はわずかな物を食べ、自分で作った強い酒で終わりの見えない憂いを晴らした。その日も朝から働いた。水を運び、草を取り、山羊を餌場に連れていった。夜になると山羊を縄で小屋につなぎ、野良着のままで藁を詰めた布団に転がった。闇の向こうで音がした。山羊がおびえて啼いていた。農夫は起き上がってマッチを擦った。黄色い光に皺が刻まれた顔が浮かぶ。農夫はランプを取って火を灯した。土を固めた床にランプを置いて、古びた鉄砲を手に取った。音に耳を澄ませながら銃口に火薬を注ぎ入れ、送りを入れ、槊杖を取って送りを沈め、槊杖を抜いて弾を入れた。鉄砲を抱え、ランプを取ると立ち上がって外へ出た。星の明かりがざわついている。農夫は足音を忍ばせて小屋を回った。山羊が啼いた。手にしたランプを掲げてそれを見た。干からびた猿のような化け物が山羊に食らいついている。音を立てて血を吸っている。大きさは山羊とあまり変わらない。背中からヤマアラシのような棘が生えている。それが農夫を振り返った。大きな赤い目がぎらついた。農夫はすばやくランプを置くと鉄砲をかまえて引き金を引いた。弾はそれて化け物の頭上のどこかへ飛んだ。化け物はとがった牙を剥き出して叫び、いきなりぴょんと飛び上がると森のほうへ消えていった。

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