S1-E15
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囚人
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どうにも様子がおかしい、と同房の男は考えた。戻ってきてからこっちに背を向けて寝たままだ。声をかけても返事もしない。ときどき気味の悪い声で呻いている。ときどき引きつったような動きをする。気のせいかもしれないが肌つやが悪い。こいつ、こんなに太い腕をしていたか。こいつ、こんなに毛深かったか。毛がめらめらと動いている。腕や肩が膨らんでくる。シャツの背中が裂け始める。どうしたっておかしい。いや、おかしいなんてもんじゃない。これはやばい。看守を呼ぼう、と男は決めた。格子を掴んで叫び始めた。寝台の上の男が動いた。床に飛び降りて黄色い目を輝かせ、耳まで裂けた口を開いた。
Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.
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