2012年9月8日土曜日

ドリームキャッチャー

ドリームキャッチャー
Dreamcatcher
2003年 アメリカ 136分
監督;ローレンス・カスダン

幼馴染の男たち4人が冬の山小屋に集まって、ビールを飲んで馬鹿話をして楽しんで、翌日は2人がトラックで買い出しに、残る2人は鹿狩りに出る。そして鹿狩りに出たうちの1人が降りしきる雪の中で腹具合の悪い中年男と遭遇し、救いの手を差し伸べて山小屋へ招き、買い出しに出た二人組はその帰り道で路上にうずくまる人影を避けようとして運転を誤る。山小屋に残った2人組みは助けた男がしきりともらす「げっぷ」や「おなら」に閉口し、森の動物たちがぞろぞろと逃げ出していく光景を窓の外に見て驚愕する。しかも上空には武装ヘリコプターが出現し、一帯は制限区域に指定されて移動は不可能になったとスピーカーで告げていく。一方、ひっくり返った車から這い出た買い物組の2人は路上にうずくまる女性に声をかけ、脚を痛めた1人は女性とともに後に残り、1人は助けを求めて山小屋へ走る。同じ頃、森の外では軍隊が展開していて周辺住民を一箇所に収容し、一見して狂信的な指揮官は年齢を感じて指揮権を副官に譲ろうとしていた。指揮権の象徴とはかつてジョン・ウェインから贈られたという派手な自動拳銃であり、指揮権の内容とはエイリアン対策特殊部隊「ブルー隊」の全権であった。さらに同じ頃、その山小屋では中年男の体内から肛門を食い破って長めの芋虫のごとき怪物が出現を果たし、男たちの1人を食い殺してもう1人の身体を乗っ取り、救いを求めて小屋へと小屋へと近づきあった買い物組の1人は身体を乗っ取られた男の心を読んで事態を素早く察知する。テレパスだったのである。20年前、この仲良しの四人組は知的障害のある少年を危機から救って友達になり、親しくつきあっているうちに特殊な能力を授けられていたのであった。エイリアンに身体を乗っ取られた男はスノーモビルにまたがって奥深いメインの森から脱出を図り、アパッチ・ヘリコプターの編隊は不時着したエイリアンの宇宙船へと接近し、「無害です殺さないでください」とテレパシーで懇願するエイリアンの群れをミニガンで掃討する。すでに引退を宣言した指揮官の説明によれば、エイリアンの懇願は嘘八百で、不時着したついでに地球征服を企んでいるのである。指揮官はかれこれ25年間もエイリアンと戦ってきたので間違えようがないのである。しかもその指揮官というのがモーガン・フリーマンなので説得力があるのである。疑いを入れる間もなくエイリアンの宇宙船は派手に自爆してアパッチの編隊の大半を飲み込み、森から脱出したエイリアンは乗り物を替えてマサチューセッツへと進んでいく。ところがエイリアンには誤算があった。乗っ取った相手は半年ほど前に交通事故にあって二度の心停止を経験しており、臨死体験を通じて何かが(何がだ?)が変わっていたために、意識のすべてを乗っ取られてはいなかった。心は友達と通じ合っていた。事実を察したテレパス男はブルー隊の良心的な副官を説得し、悪いエイリアンの野望を阻むべく追跡を開始する。だがそのためには助けが必要だ。20年前のあの知的障害の少年は、あの時からすでにこれを予期していた。少年はとうに成人して白血病で死にかかっていたが母親に見送られて追跡行に加わった。間もなく真相は明らかになる。すべては宿命の中に組み込まれていたのであった。少年はよいエイリアンなのであった。そして悪いエイリアンはボストンの水源に寄生虫を流して人類を滅ぼそうと企んでいたのであった、という、寝ぼけているのではないかと疑いたくなるほど盛りだくさんの内容をローレンス・カスダンは破綻もさせずに手堅くまとめている。血まみれのモンスター描写、これでもかのエイリアン描写も含めて全体によい仕事ぶりではないだろうか。原作は読んでいないけれど、おそらく見たまんまであろうと確信している。 



Tetsuya Sato