Equilibrium
2002年 アメリカ 107分
監督: カート・ウィマー
21世紀初頭、第三次世界大戦が勃発し、生き残った人類は第四次世界大戦を回避するために一切の感情を捨てる決意をする。怒りや憎しみが戦争を起こしたに決まっているからである。そんなことよりも非武装化した方が話が早いのではないかと考えていると、いきなり抵抗勢力との戦いになって重武装の警官隊が出動する。なにしろ感情を捨ててしまった世界なので情動の起点になるような絵画や音楽も禁止されていて、抵抗勢力が床下に本物のモナリザなどを隠していると摘発されて焼却されてしまうのである。もちろん抵抗勢力の方でも摘発されるのを黙って見ているわけではなくて、こちらはこちらでしっかりと武装していたりするので、これはやはり感情の問題よりも武器の問題であろうなどと思って見ていると、部屋にこもった抵抗勢力を処理するためにクラリックなる特殊技能者が送り込まれる。クラリックは「ガン=カタ」とかいう格闘技を習得していて、これができると相手が撃った弾は当たらない、こちらが撃った弾は必ず当たるというたいそう都合のよい結果を引き出すことができるのである。というわけでクラリックは任務を遂行するのであったが、もちろん現政権の圧政に疑問を抱いて抵抗勢力に心を傾け、最後は悪い独裁者と一騎打ちということになる。
体制に疑問を抱くクラリックがクリスチャン・ベイル、その同僚がショーン・ビーン、抵抗勢力のリーダーがウィリアム・フィクトナー、主人公が心を動かす抵抗勢力の女性がエミリー・ワトソン。
話は電脳空間のない『マトリックス』で、 独裁者が安直にも「ファザー」と名乗り、その政府が怪しい本を発行しているところは『1984年』を意識したような気配があるものの、設定の単細胞は否めないので『デモリションマン』の世界の方が雰囲気的に近いような気がするし、司法官が戦闘能力の面でひどくインチキをしているというあたりでは同じくスタローン主演の『ジャッジ・ドレッド』に似ている。星新一の『白い服の男』のアクション映画版だと言えば、もしかしたらいちばん早いのかもしれない。クラリックは黒い服を着ているが、劇中に登場する体制の車はすべて白で、真っ白に塗られた化学消防車はなにやら異様な感じがして迫力がある。映画としては微妙に詰めの甘さが目立つものの、クリスチャン・ベイルが披露する「ガン=カタ」はなにやら独特の雰囲気があって、とにかくネタとしては面白い。
Tetsuya Sato