2012年9月12日水曜日

チームアメリカ ワールドポリス

チームアメリカ ワールドポリス
Team America World Police
2004年 アメリカ 98分
監督:トレイ・パーカー

アメリカの大企業の利益を守るチームアメリカが9.11の100倍(91100)とか、9.11の1000倍(911000)のテロと戦っていると、テロの元締めである北朝鮮の金正日は9.11の2356倍(誰にも計算できない)のテロをたくらみ、チームアメリカに挑戦する。
登場人物はすべてマリオネット、特撮は『サンダーバード』、というよりは東映戦隊物を思わせるちゃちなミニチュア、それがまた確信犯的にちゃちに爆発し、エッフェル塔はひっくり返り、凱旋門は粉砕され、ルーブル美術館は炎に包まれ、ピラミッドには大穴がうがたれ、そしてスフィンクスは首が落ちる。すべてはテロリストと戦うチームアメリカの仕業なのであった。
アメリカというキーワードをおもにチームアメリカと俳優ギルドの二点に集約した結果、市民感覚的な歪んだ多様性が後景に退き、それによって単純化した部分を国際テロとハリウッド・メジャー批判で補ったところ、焦点が絞りきれずに終わったようなところがあり、その点で『サウスパーク(無修正映画版)』に比べると粗削りな部分が見えるが、それでもトレイ・パーカーの悪趣味は健在である。マリオネットの男女は様々な体位で恥ずかしげもなく交接をおこない、悪酔いしたマリオネットの男はしつこくゲロを吐きまくり、歌では『パール・ハーバー』とマイケル・ベイをこき下ろし、アレック・ボールドウィン、ジョージ・クルーニー、ショーン・ペン、サミュエル・L・ジャクスン、リヴ・タイラー、ヘレン・ハント、スーザン・サランドン、マット・デイモン、ティム・ロビンス、マーティン・シーンなどの著名俳優のマリオネットを登場させて皆殺しにした上(マット・デイモンの扱いについてはやりすぎだった、とあとでトレイ・パーカーが反省している)、マイケル・ムーアのマリオネット(そっくり!)に自爆テロをやらせている。
マリオネットの演技(頭部のメカニズムがすごいのである)、アクションは見ごたえがあり、挿入歌も悪くない。"America, Fuck Yeah!"はなかなかけっこうな仕上がりだし、金正日のソロナンバー"I'm so ronely"も聞けたし(エンディングクレジットでは二番も流れて、その歌詞では金正日の恐るべき正体があきらかにされる)、主人公ゲイリーの特訓シーンに流れる"Montage"は笑えた。金正日のネコたちもかわいいし、目に見える難点がいくらかあるとしても、この恐ろしく手間のかかった愚劣さは、おそらく無類と言うべきであろう。





Tetsuya Sato