1944 独ソ・エストニア戦線
1944
2015年 エストニア/フィンランド 99分
監督:エルモ・ヌガネン
1944年7月、タンネンベルク線に投入された第11SS義勇装甲擲弾兵師団のエストニア人部隊はソ連軍の攻勢を押し戻し、デンマーク人部隊と共同してソ連軍突出部の撃退に成功するが、ドイツ軍の撤退にともなって移動を命じられ、避難民とともに南下したあと後方の拠点を確保、前方に森を見ながらソ連軍エストニア人部隊と交戦し、そこまでの語り手であったカール・タミクがあっさりと戦死、ソ連軍エストニア人部隊の中隊長がラディッシュ(外は赤いが中身は白い)であったことからソ連軍は交戦を停止、生き残った武装親衛隊所属のエストニア人は戦場を離脱し、カール・タミクが姉に宛てて書いていた手紙をソ連軍エストニア人部隊の下士官ユーリ・ヨギが拾い上げ、ソ連軍によって解放されたタリンでカール・タミクの姉に手渡し、ソ連軍エストニア人部隊はハープサル方面へ進出、ドイツ軍から除隊または脱走して赤軍に編入された補充兵を加えながら戦いを続け、エストニアを「解放」する。
つまり前半はドイツ側で戦ったエストニア人の話、後半はソ連側で戦ったエストニア人の話という構成になっていて、監督は『バルト大攻防戦』のエルモ・ヌガネン。序盤の塹壕戦から中盤の遭遇戦、終盤のソ連軍のむやみな突撃場面まで、戦闘シーンは地味ながら非常によくできていて、戦闘状況の変化にともなう兵士のふるまいが変わっていくあたり(接近戦が近づいてくると手榴弾の準備に取りかかる、など)も芸が細かい。StG44を使っている背後でもう一人の兵士がせっせと弾込めをしている描写は初めて見た。ドイツ軍、ソ連軍の装備類はよく再現され、T-34が二両ほど登場する。尺は短い映画だが、淡々としている分テンポはのろい。だが、戦争それ自体を含む状況のむごたらしさが粘り強く描かれていて見ごたえがある。力作であろう。
Tetsuya Sato