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「ヒュンはわたしが作り出した怪物だ」とギュンはいつも話していた。「わたしがいなければヒュンはコソ泥で終わっていた」とギュンはいつも話していた。「ヒュンの殺戮能力は誰よりもわたしが一番よく知っている。だからこそ、ヒュンを倒すのはわたしでなければならなかった。わたしでなければヒュンを倒すことはできなかった。わたしは冷静に観察して、ミュンがヒュンを操っていることに気がついた。ミュンはヒュンを自分の革命のために利用していた。利用するだけ利用して、そのあとは始末するつもりだということにも、わたしはすぐに気がついた。そもそもヒュンはわたしが作り出した怪物だ。ミュンにはヒュンを利用する資格はなかったし、まして始末する資格もない。わたしはスーパー聴力を使ってミュンがシロエに与えた指示を聞き取った。スーパー聴力とはエイリアン・テクノロジーの研究成果だ。わたしは耳に手を当てるだけで壁の向こう側の囁きを聞き取ることができるのだ。わたしはミュンの囁きを聞いて確信した。ミュンは明らかに、わたしに対して不利益をもたらそうとたくらんでいた。ミュンがそうするつもりなら、わたしもわたしなりに対抗しなければならなかった。わたしはスーパー嗅力を使ってシロエの体臭を記憶した。これもエイリアン・テクノロジーの研究成果で、半径五百メートル以内であれば相手の空間座標を特定できる。わたしがシロエを見つけたとき、シロエは廃墟と化したビルの最上階にいて、狙撃銃でヒュンを狙っていた。引き金に指をかけて、いつでも発砲できる態勢になっていた。わたしとシロエのあいだの距離は三十メートル。ふつうならば間にあわない。攻撃系の魔法玉を投げつけるか。いや、そんなことをする必要はない。わたしにはエイリアン・テクノロジーの研究成果によって身につけたスーパー眼力があったのだ。わたしはただにらむだけで、肉体年齢で二十七歳以下の女性に決定的な不快感を与えることができるのだ。相手がわたしに背を向けていても関係ない。わたしは最大パワーでシロエをにらんだ。シロエは銃を捨てて飛び上がるように立ち上がり、まるで不審者を見るような目でわたしを見ると逃げるように立ち去った」
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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