2013年8月8日木曜日

ミミック

ミミック
Mimic
1997年 アメリカ 105分
監督:ギレルモ・デル・トロ

ニューヨークの地下最深部に人間に擬態する能力を備えたゴキブリが生息しているという話で、ちょうどこの映画が作られた頃、都市の大深部とかもぐら人とかがちょっとブームになっていたという記憶がある。日常性の一歩先に潜んだワンダーランドというわけであろう。たしかにいろいろと想像を刺激されるし、この映画もアイデアは抜群に魅力的だったのだが、その先に話を広げることができなかった。とはいえ、巨大なゴキブリが影で人間の姿をなぞって地下鉄のホームの端っこに現れる、というそれだけなんだけどそれでは済まない印象深い描写には一見の価値があると思う。 

Tetsuya Sato

2013年8月7日水曜日

昆虫大戦争

昆虫大戦争
1968年 松竹 84分
監督:二本松嘉端

秋山譲治は東京にある生物学研究所の昆虫学者南雲博士の依頼を受けて亜南群島で昆虫採集の仕事をしていたが、譲治が見つけて東京に送った虫は未発見の種類で、しかも恐るべき神経毒を持ち、人間を狂い死にさせる力を備えていた。その譲治の妻ゆかりは家計を助けるべく島のホテルで働いていたが、ホテルの親父はゆかりに懸想し、譲治は譲治で昆虫採集と称して妻から離れ、謎のブロンド美女アナベラと浜辺で日光浴などを楽しんでいる。すると上空にB52が現われて、昆虫の群れにまかれてエンジンを損ない、墜落していくのである。
アメリカ空軍は早速「折れた矢」作戦を発動してゴードン中佐が率いる調査隊を島に送るが、脱出した乗員は異様な傷をこしらえて息絶えており、唯一助かった黒人兵チャーリーは頭を打って意識を失っている。島の警察は空軍仕様の時計を持ち歩いていた譲治を殺人容疑で逮捕するが、譲治は自分は無実であると言い張るのであった。
譲治を救うために東京から南雲博士が到着し、乗員の死体を調べて虫の咬み傷であると指摘し、また意識を取り戻したチャーリーはうわ言の合間に虫に対する恐怖を訴えるが、任務の重責にしゃちほこ張ったゴードン中佐は譲治が犯人であると信じて譲ろうとしない。だが、いずれにしてもゴードン中佐の目的は失われた水爆の発見にあり、チャーリーを責め立てて墜落地点を調べていると、譲治は護送の途中で逃げ出してアナベラの家にかくまわれる。実はこのアナベラこそが謎の昆虫の生みの親で、ナチスドイツの強制収容所を生き延びた彼女は人類への憎悪に取り憑かれ、昆虫を使ってこれを滅ぼそうとたくらんでいたのである。
いや、それだけではないのである。ホテルの親父は実はコミュニストのスパイで部屋に無線機を隠していて、ゴードン中佐の鼻先から水爆を奪い取ろうとたくらんでいて、そのためにチャーリーは誘拐されてしまう。そしてこのコミュニストのスパイどもはアナベラと通じており、アナベラはチャーリーに告白を強いるために毒虫に咬ませ、そんなことをしたら死んでしまうのではないか、などと見ているこちらは心配するわけだけど、チャーリーは飛行機が水爆を積んでいたと告白して発狂する。
コミュニストどもはチャーリーにピストルを与えて解放し、ピストルを握ったチャーリーは島の診療所の女医を襲い、察するに狂っているからであろう、リボルバーから再装填なしで15発も発射する。チャーリーが狂った理由を探るために南雲博士は自分を虫に咬ませるという実験をおこない、その結果、感じやすい虫たちは核の脅威を感じ取って、核戦争が起こる前に人類を滅亡させようとたくらんでいたことが判明する。南雲博士が無事なのはすでに解毒剤を持っていたからで、そしてコミュニストどもは譲治を脅して水爆の在り処を見つけ出し、虫の脅威を知ったゴードン中佐は南雲博士をさらって島から逃れ、証拠を隠滅するために島ごと水爆を爆破しようとたくらむのであった。
ホテルが一つしかないような小さな島で、与太同然でコメディにしかならない状況や人物関係を扱いながら、核の脅威、東西対立の脅威、戦争の脅威など、メッセージを山ほども謳い上げ、最後には登場人物がほとんど全滅してしまうというシニカルな内容になっている。特殊効果の水準は総じて低いが、虫の群れなどは頑張っていた。


Tetsuya Sato

2013年8月6日火曜日

TAJOMARU

TAJOMARU
2009年 日本 131分
監督:中野裕之

室町時代末期、代々管領職にある畠山家の二男直光は大納言の娘阿古姫をいいなずけとしていたが、そこへ足利義政が現われて家督相続の条件として阿古姫との結婚を追加するので、長男信綱は直光の家来桜丸の入れ知恵を受けて阿古姫を押し倒し、直光は桜丸からの通報を受けて信綱の手から阿古姫を救うと若干の手勢とともに都から逃れ、途中、桜丸の手で家来を殺され、次いで現われた盗賊多襄丸と戦って失神し、失神しているあいだに多襄丸と阿古姫とのあいだに直光の誤解を招く何かが起こり、意識を取り戻したところで阿古姫が多襄丸に直光の殺害を要求するのを見て激しく困惑し、阿古姫が逃げ出した混乱をついて多襄丸を殺すと多襄丸を襲名して盗賊団の頭となるが、畠山家の二男直光が管領職を継ぐと訊いていぶかしみ、自宅に戻ってみると桜丸が直光を名乗り、その妻として阿古姫が現われ、そこへさらに京都所司代が現われ、関係者のほぼ全員が捕縛され、所司代における吟味によって桜丸の悪事が暴かれるが、そこへ足利義政がやって来て状況をひっくり返し、阿古姫は地獄谷へ送られ、阿古姫の自分に対する愛を知った直光は盗賊の仲間とともに所司代から逃れて地獄谷へ急ぎ、阿古姫を救って桜丸と対決する。
なんだかごちゃごちゃしているのである。
『RED SHADOW』のころに比べると演出はかなり進化しているし、ところどころに野心的な要素が見え隠れするものの、ダイアログに失策が目立ち、構成を欠く。演技をつけられないのであれば、もう子供は使わないほうがいいと思う。


Tetsuya Sato

2013年8月5日月曜日

GOEMON

GOEMON
2009年 日本 128分
監督:紀里谷和明

16世紀末。太閤秀吉が日本に君臨していたころ、大泥棒を自称する石川五右衛門はとある箱を手に入れたことから石田光成の手の者に追われることになるが、その箱から地図を見つけた五右衛門は密書を発見して本能寺の変の背後に秀吉と家光の密約があったことを知り、その密書は服部半蔵の手を経て徳川家康に渡り、家康はそれを茶々に見せて秀吉暗殺をそそのかし、秀吉が朝鮮侵攻の準備を整えて茶々とともに軍船に乗り込むと、茶々、五右衛門、霧隠才蔵、石田光成がそれぞれの事情で秀吉暗殺にかかり、秀吉が生き延びて霧隠才蔵を捕えると五右衛門が霧隠才蔵を救い、秀吉が霧隠才蔵の妻に手をかけ子を奪うと霧隠才蔵は五右衛門を罵り、子を救うために再び捕えられて処刑され、それを見た五右衛門は城に乗り込んで秀吉の手勢と戦い、秀吉を殺して茶々を救い出し、さらに関ヶ原の合戦に乗り込んで石田光成を倒し、徳川家康も倒そうとしたところで失敗する。
なんだかごちゃごちゃしているのである。
『CASSHERN』のころに比べるとかなり進歩しているし、ダイアログはおおむね自然に感じられたが、表現と説明を混同している。そして視覚デザインは表現でも説明でもなく、単なるデザインで終わっているため、奇異には見えても、そこにあるようには見えてこない。


Tetsuya Sato

2013年8月4日日曜日

CASSHERN

CASSHERN
2004年 日本 141分
監督:紀里谷和明

50年にわたる戦争が終わり、亜細亜連邦はユーラシア大陸に支配権を確立したが、極端な民族政策を実行した結果、周辺各地で少数民族がテロリストと化し、云々というナレーションが流れ、戦争による汚染のせいで奇形や奇病がはびこり、その状況から国民を救い出すためにはなんとしても新造細胞の研究が必要云々という寺尾聰扮する科学者の長い長い説明が続き、陸軍所管の研究所でその研究が始まると、寺尾聰の息子の伊勢谷友介は父親に反発して軍隊へ飛び込み、民族紛争に巻き込まれて戦死を遂げ、研究所ではばらばらの人体パーツが勝手にくっつきあって人間となり、その頭目の唐沢寿明は新造人間と名乗って人類との戦いを宣言する。一方、寺尾聰は死んだ息子を新造細胞の培養液につけ込んで蘇らせ、生き返った息子はプロテクターをつけてキャシャーンとなる。
内容のないダイアログ(時間稼ぎ?)、脈絡のない映像(未来派?)、学芸会のような芝居、そうしたものをつなぎあわせてできあがったのは上映時間が2時間半近くもあるひどく退屈な映画である。いったい、このバカどもはなぜ必要もないのに(そしてできもしないのに)プロットを作ろうなどと考えるのか。映像面も見たようなガジェットばかりで新味はないし、どこまでいっても全体のデザインが見えてこないのですべてが無駄に終わっている。なぜただのタツノコにできなかったのか?(間違ってガッチャマン2になってしまったとしても、まだましではなかったか?)


Tetsuya Sato

2013年8月3日土曜日

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー
2008年 日本 113分
監督:本木克英

二浪して京都大学に入った安倍明は五月病でへこんでいるところで京都大学青竜会というサークルから誘いを受け、なんとなく新歓コンパに参加したところ、そこに現われた早良京子に言わばひとめぼれをして早良京子が青竜会に入るというのでそのまま入会したところ、この青竜会というのは京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックス、立命館大学白虎隊と並んで千年の伝統を持つホルモーをおこなう団体で、新入会員はまずオニ語の特訓を受け、吉田神社で儀式をおこなうとついにオニが見えるようになるので、このオニをあやつって立命館大学白虎隊が率いるオニと戦ったところ、安倍明の友人高村幸一の立ち往生で惨敗、このせいで安倍明は同じく新入会員でいささか粗暴だが主戦力である芦屋満との関係を悪化させ、早良京子と芦屋満が恋愛関係にあることを知っていよいよ芦屋満への敵意をつのらせ、ただ青竜会は事実上退会できないような事情があることから規約17条を盾にチームの分割を試みたところ京都上空に暗雲が漂い、神々がお怒りになっている、ということで安倍明のチームと芦屋満のチームが神々の怒りをなだめるためにホルモーをおこなう。 
例によって、ということになるが、カメラワークが雑で絵が説明以上のものではない、というのが気になった。加えて恋愛にかかわる部分で微妙に長さを感じたが、それでも演出は安定しているし、学生の生態がいかにもそれらしく描かれているし、生活の細部の描写が楽しいし、京都という背景を余さずに使っているし、ホルモーもなかなかにばかばかしいし、ということでこれは拾い物であった。 


Tetsuya Sato

2013年8月2日金曜日

月に囚われた男

月に囚われた男
Moon
2009年 イギリス 97分
監督:ダンカン・ジョーンズ

月の裏側に置かれたエネルギー採掘基地で働くたったひとりの男が三年契約の終了を二週間後に控え、地球へ帰るのを楽しみしていると作業車の運転中に幻覚を見て事故にあい、ベッドで目覚めた男が基地の外へ出かけていくと擱座した作業車のなかで負傷した男を発見し、それが自分とそっくりであることに気づいて驚愕し、どうやら自分たちはクローンであるらしいと疑って調べていくと基地の地下には自分と同じ姿のクローンがやまほどもしまわれていて、採掘企業を保有する企業はそのひとりひとりを起こしては三年間で償却するということを繰り返していることが判明する。
アイデアは古典に属するし、映画自体も小品ではあるが、良心的な作りが好ましい。サム・ロックウェルのひとり二役は見ごたえがあり、いまどきは珍しいミニチュアワークがなかなかに楽しい。

Tetsuya Sato