ザ・コンヴェント(2000) The Convent 監督:マイク・メンデス 1960年。女学校付きの修道院の聖堂で聖餐式がおこなわれている最中にくわえタバコの女学生がガソリンタンクをぶら下げて乗り込み、司祭、修道女を皆殺しにして火を放つ。それから40年後、頭の空っぽな大学生の男子四人、女子三人が廃墟となった修道院にもぐり込み、たまたま居合わせたデイリークイーンのアルバイトが悪魔崇拝の儀式をおこなった結果なのか関係ないのか、女子大生の一人がゾンビ状態となり、まわりの人間をかみ殺してゾンビの輪を広げ、童貞の男の子をいけにえに改めて悪魔崇拝の儀式に取り掛かるので、ただ一人逃げ出した女子大生が40年前の事件を引き起こした女子高生(当時)に救いを求め、そうすると現在五十代のおばさんが革ジャンをまとい、ショットガン片手にバイクにまたがって突っ込んでいく。 突っ込んでいくのがエイドリアン・バーボー、というのがおそらくミソなのであろう。演出は全体に単調ではったりに乏しく、リズムが悪い。ゾンビのメイクを蛍光塗料でほどこし、そこにブラックライトをあてて独特の雰囲気を出しているが、それはそれで結果としては、やはり安っぽい。ゾンビ状態になった尼僧たちがそのまんまの状態で従来どおり授業を続けていたりとか、けったいなコミック演出に笑えるところがあるものの、作り自体の整理の悪さ、というか、だらしのなさは覆いようもなく、そこを笑って見過ごすのか、眉をひそめるのか、かなり難しいところではある。 ザ・コンヴェント~死霊復活~ [DVD]
チルドレン・オブ・ザ・デッド(2001) Children Of The Living Dead 監督:トー・ラムシー かなり頭が痛い。冒頭のゾンビ狩りは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を思い出せるが、それでゾンビがはびこるということもなくて、それから十数年後、コンサートに行く途中の若者たちを乗せたバンが崖から転落し、死んだ若者たちはゾンビとなって蘇る。で、どうやらこのゾンビどもは地元で都市伝説と化している連続殺人犯に操られていて、その殺人犯自身がそもそもゾンビのような化け物で、物陰で悪事をたくらんでいるようなのである。トム・サヴィーニは冒頭にちょっと顔を出しているだけ。昼飯つきで呼ばれたから出た、という感じであろうか。
ハウス・オブ・ザ・デッド(2005) House of The Dead 監督:ウーヴェ・ボル つまり、ウーヴェ・ボルである。死の島と呼ばれる島でなぜかパーティが開かれていて、そこへダンゴムシ程度の知能しか備えていない若者たちが出かけていって不純異性交友などをしていると、ゾンビが山ほども湧いて出て飛んだり跳ねたりしながら襲いかかってくるので、このダンゴムシ同然の若者たちは密輸業者の船長から武器を提供されてゾンビと戦う。目の前に船があるんだから、さっさと逃げりゃいいじゃねえか。 シューティング・ゲームの映画化だという。だから、というわけでもあるまいが、映像的に説明すべき状況はほとんどが台詞で説明され、延々と続くとにかく長いシューティング場面ではゲームのなかの粗いポリゴンの映像が頻繁にインサートされて、これがうざい。そしてかっこいいとでも思っているのか、カメラはむやみとぐるぐるとまわり、このぐるぐるとまわっている時間だけでも頭を使えばもう少しましな映画になったのではないかと思えてならないような次第である。脚本は最低、演出も最低、音楽も最低。冒頭、密輸船の船長役でユルゲン・プロフノウが顔を出し、その顔を見た若造が「Uボートの艦長?」と訊ねる間抜けな場面には悲しいやら頭にくるやらでかなり不快な思いをした。 ハウス・オブ・ザ・デッド [DVD]
デッドマンソルジャーズ(2006) Horrors of War 監督:ピーター・ジョン・ロス、ジョン・ホイットニー 1944年8月。アメリカ軍の小部隊がドイツ占領下のフランスの森を進んでいくと全滅しているドイツ軍の小部隊に遭遇し、アメリカ軍の小部隊もまた間もなくドイツ軍の小部隊を全滅させた原因と遭遇する。これがなぜか狼男で、この狼男と遭遇した結果、フランス人の女性を暴行した上に射殺するような大尉は死亡、中尉と軍曹が生還を果たし、本隊に戻って報告すると、ほかでも同様の事件が起こっていると知らされる。つまりドイツ軍はなにか新兵器を開発しているようなので、ということで、翌月、その新兵器に関わりのある人物を確保するために再びアメリカ軍の小部隊がドイツ占領下のフランスの森を進んでいくと廃虚のような場所(いや、なんのことはないオハイオかどこかの廃工場)で秘密の研究がおこなわれていて(しかも遠慮がちに隅のほうの一室だけで)、ドイツ軍が薬物を使ってスーパーソルジャーを作っていた、ということがあきらかになるわけだけど、じゃあ、さっきのあの狼男はなんだったのか、という点については説明がなくて、説明をしている科学者がいきなりうわおうとか言って一昔前の安っぽいゾンビのようなものに変身して襲いかかってくるので、最初の狼男に噛まれていた軍曹が耳をつんつんと立てた狼男の姿になって格闘を始め(でも、いつ変身したのだろう)、それでも勝てないので、スーパーソルジャーにはスーパーソルジャーだ、ということでアメリカ軍の大尉が自分のからだに薬品を打って、一昔前の安っぽいゾンビのようなものに変身して一昔前の安っぽいゾンビのようなものと戦う。 オープニングタイトルにはいくらかのセンスが感じられたものの、コストパフォーマンスの悪いキャラクター、ねぼけたような脚本、リアリティの乏しい演出は見る者を少なからず退屈させる。かなりの低予算で、基本的には森のなかを数人の兵隊がうろうろしているだけ(しかも銃を持ち慣れていない)、戦闘場面でも両軍をあわせて二十人を越えることはない(とはいえ、その状況で回想シーンでは必要もないのにDデイをやり、どこからか野砲や装甲車まで持ち出してくる根性は認めなくてはならないが)。 デッドマン・ソルジャーズ [DVD]
レディオ・オブ・ザ・デッド(2009) Dead Air 監督:コービン・バーンセン ラジオのDJが自分の番組でおしゃべりをしていると電話で事件を知らせる声があり、テレビを見ると全米で同時多発テロがあって、謎のウィルスが放出されてウィルスに感染した人間が目から血を流しながら人間に襲いかかっているようなので、ラジオのDJは番組からリスナーに訴えて情報を集め、自分の家族の安否を確かめるためにパートナーをバイクで町へ送り、その様子を実況放送するなどのことをしていると、そこへウィルスを流したテロリストが一人でピストルを構えて押し入ってきて、事件はイスラム教徒のしわざであり、さらに核爆発の危険があり、放出されたウィルスはFBIが開発したものであるとラジオで話すように要求し、DJがその理由を訪ねると憎悪をあおり、アメリカ人の憎悪をアメリカ政府に向けるためであるとテロリストが説明し、そのテロリストもまたウィルスで凶暴化したアメリカ人によって分相応の最期をとげ、しかしテロリストは血清を残すので、凶暴化した人間がウィルスの効果で死に絶えると番組のプロデューサーはWHOに血清を渡し、DJは家に戻って生き延びた妻子を抱きしめる。現代アメリカにおける生存の不安を訴えようとしているらしいが、過剰なメッセージ性は作品を幼稚に見せるだけだし、ダイアログがそもそも意図に追いついていない。状況をラジオ局のスタジオに限定するというアイデアは決して悪くはないものの、おそらくは想像力の不足から限定しきれないことになり、現場の状況に話が移ると暴徒の群れが車の途切れたタイミングで道に現れるといった具合に恐ろしい低予算ぶりが露呈する(全編にわたって交通規制をしている気配がまったくないので普通に車が走っている)。出演者はいちおうベテランをそろえているし、DJを演じたビル・モーズリイの独特の風貌は見ごたえがあるが、暴徒の動きやアクションも含め、演出は二流である(アマンダ・ペイズの亭主だって?)。いっそゾンビまがいの話はやめて、ウィルスのせいで全米の市民がいっせいに本音をしゃべるようになり、番組に電話をかけてきて恥ずかしいことをしゃべりまくる、といった内容にでもしたほうがラジオ局という設定を生かすことができたのではあるまいか。ウィルスの効果が消えたところでみんなで一緒に恥じ入れば、おそらく結論は一緒であろう。 レディオ・オブ・ザ・デッド [DVD]
ナイト・オブ・ザ・コメット(1984) Night of The Comet 監督・脚本:トム・エバーハード 彗星の夜に、彗星の光をたっぷりと浴びた人間はことごとく粉になってしまうのである。そして中途半端に浴びると乾燥してゾンビ状態になり、どうやら凶暴化するのである。そしてたまたま難儀をまぬかれたティーンエージャーの姉妹は頭の軽さに少々難があったものの、それでも武器を手にしてゾンビと化した連中と戦い、ゾンビにかどわかされた子供たちをゾンビどもから助け出し、最後にはボーイフレンドも手に入れて、文明存続のために生きるのである。 トム・エバーハードの演出はセンスがあってリズムがいい。緊張はほどよくはずし、ユーモアも折り込み、ちょっと明るく青春もしてみる「文明の終末」映画なのである。こういうのはちょっと珍しい。傑作というつもりはないけれど、嬉しい驚きだったのである。 ナイト・オブ・ザ・コメット [VHS]
クリープス(1986) Night of the Creeps 監督・脚本:フレッド・デッカー ゲテモノ映画好きには応えられないような作りのごった煮侵略SF青春映画。冒頭からいきなり「エイリアンの宇宙船」が出現するしゾンビはうろうろするし、寄生生物はけっこう不気味だし、青春している若者たちはとにかく元気でアホウだけど、まるっきりのアホウというわけではないので、状況にはちゃんと対処する。やりたい放題という感じではあるが、いちおうバランスは取れているし、ホラー系コメディとしての水準もきちんとクリアできている(ただ、登場人物の名前がクローネンバーグだったりランディスだったりキャメロンだったりライミだったりというあたりは少々野暮ったい)。ごちゃごちゃしている割には妙に腰が座っていて、そこにこだわりを見せるのがフレッド・デッカーの作風のようで、そのこだわりが災いしてけっこう不遇だとも聞いている。 クリープス [VHS]
バタリアン(1985) The Return of The Living Dead 監督・脚本:ダン・オバノン ひどい邦題がついているが、原題は"The Return of The Living Dead"で、つまり『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』の系譜に自発的に割り込んでいった作品である。冒頭、いきなり「実話に基づく」という大胆な宣言がおこなわれ、医薬品倉庫(だったかな?)では先輩社員が後輩社員に向かって、あの話は本当にあったことだと「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のさわりを喋り始める。この世にもいかがわしい怪談ぶりに見ているこちらがわくわくして待っていると、案の定、その実際にあった事件で処分に困った物体がこの倉庫にあるという話になって、どんどん恐ろしいことになっていく。ジョージ・A・ロメロの生ける死者とは事なり、こちらのゾンビは全力で疾走し、よく喋り、チャンスがあれば人間を罠にはめ、しかも頭痛を抱えている。間抜けな雰囲気が全編に漂うコメディである。 バタリアン [DVD]
28日後... (2002) 28 Days Later 監督:ダニー・ボイル 三人組の活動家がケンブリッジの霊長類研究センターに侵入する。そこではチンパンジーが見た目に明らかな虐待を受けている。さっそく解放しようとしていると研究所の職員が現われて言うのである。その猿は「怒り」に感染している。「怒り」は血液や唾液を媒介にして広がる。その感染力は猛烈に強い。 もちろん研究者がどう警告したところで、活動家というのは聞く耳を持たないのである。チンパンジーを一匹選んで解放すると、あっという間に恐ろしいことになって、それから28日が経過する。集中治療室で一人の若者が覚醒し、病院の中を歩き始める。病院も町も無人になっていて、呼べども叫べども返答がない。ところがとある教会に入っていくと、そこには生きている牧師がいて、凶暴化して襲いかかってきた。死体の山の中から同じような連中が姿を現わし、猛烈な勢いで突っ走ってくる。わけもわからずに逃げ出すと物陰から助っ人が現われて暴漢は火だるまとなり、それから説明がおこなわれるので問題がようやく明かされる。寝ていた間に文明は崩壊していて、ウィルスに感染した人々が生存者を襲っていたのであった。で、サバイバルが始まるのである。 無人のロンドンで起こる爆発、炎上するマンチェスター、とにかく突っ込んでくる感染者、と印象的な場面は多いものの、見ているうちに、これはもしかしたら同じ監督による 「ザ・ビーチ」 の焼き直しなのではないか、という気がしてならなかった。特定の閉塞状況に疎外感を上乗せするという手口が似ているのである。人物造形が行き当たりばったりに見えるところもよく似ていて、主人公がいったい何者なのか、あいにくとわたしには最後までわからなかった。単に今様の若者ということなのだろうか。設定はジョージ・A・ロメロの 「ザ・クレイジーズ」 から借りてきて、シチュエーションの作りもおおむねロメロの映画から引っ張っていて、そこに「ザ・ビーチ」が乗っかっているという感じになるのであろうか。別にそれが悪いとは思わないけれど消化不良の気配が多分にあって、居心地があまりよろしくない。加えて一人よがりなカット割り、あいまいな状況説明(とりわけ後半で、誰がどこにいて何を見ているのかがわからない)、感傷的なだけの結末、騒々しいだけで耳の健康にはなはだ悪い音響効果と、欠点が目につく映画であった。 28日後... 特別編 [DVD]
ドーン・オブ・ザ・デッド(2004) Dawn Of The Dead 監督:ザック・スナイダー 看護婦のアナは仕事を終えて帰宅し、翌朝、夫とともにベッドで目覚める。寝室の戸口には近所に住む少女が現われ、この少女が血まみれの姿で夫に襲いかかり、頚動脈を食いちぎる。夫は間もなく絶命し、絶命した筈の夫が起き上がって自分に襲いかかってくるのでアナは家から逃げ出して車に乗り込む。外はとんでもない騒ぎになっていて、このパニック描写はものすごい。正体不明の疫病が蔓延し、その病気にかかった人間は死んで人間に襲いかかり、襲われて噛まれた犠牲者は傷口から感染して死に、生きている人間に襲いかかる。頭を撃たれるまでとまらない。間もなくアナは車を失い、ほかの生存者と合流し、近くのショッピングモールに立てこもる。 ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』の大作リメイクである。言い方を変えれば、かつてないほど金のかかったゾンビ映画なのである。オリジナルからは生存者がショッピングモールに立てこもるという部分がおもに受け継がれていて、あとはかなり変えられていて、生存者の人数も多いし、その後の展開も大きく異なる。現実の状況に照らした場合、生存者の数が増えるのは自然な展開かもしれないが、残念ながら増えたキャラクターは完全には消化されていない。それでもそれなりの見ごたえはあった。ただ、娯楽作に徹している分、ロメロ版にあった行き場のない気配は消えてしまった。ゾンビの動きが素早いところはどこか『バタリアン』を思わせる(『28日後...』みたい、とは言うまい)。 ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット プレミアム・エディション [DVD]
ショーン・オブ・ザ・デッド(2004) Shaun Of The Dead 監督:エドガー・ライト 人工衛星の墜落でロンドンに疫病が発生し、死んだ人間がゾンビとなってよみがえって人間を襲う、という状況を背景に、家電量販店の販売員ショーンが恋人との関係、家族との関係についてちょっぴり苦悩し、ふと気がつくと異様なことになっているわけだけど、常識が邪魔をするので「ゾンビ」という単語が口に出せない。いわゆる『ゾンビ』のきわめて英国的なパロディで、低予算ではあるが、ホラー描写は大真面目だし、やるべきところはきちっとやっていて、同系統のイギリス映画として(むりやり)考えた場合、ダニー・ボイルの『28日後』よりも全然見ごたえがある。人間がまるで「生きた屍」のように見える生気の乏しい生活描写と、そこにあぐらをかいてまともに動けなくなっている登場人物が魅力的なのである。後半、その口に出せない物が大量に現われると、さすがに逃げたり戦ったりするわけだけど、極限状況のなかでも根本的に習性の動物であり続けるところが哀れであった。ゾンビもまた日常のなかへ取り込んでしまう結末は出色。よく吟味された脚本とテンポのよい演出が心地よい。 ショーン・オブ・ザ・デッド [DVD]
ラストハザード(2006) Last Rites of the Dead 監督・脚本:マーク・フラット アンジェラは嫉妬深い元カレ、ジョッシュによって射殺されるが、死んでも死なない怪現象が全世界に蔓延しているためにアンジェラもせっかく呼んだ救急隊員に見捨てられ、死んでも死んでいない状態でそのまま生活を続けて昼間はふつうに出勤し、死にチャレンジされている人々の集会に出かけて自己紹介をしたり、ハグをしたり、ドーナツを食べたりしていたが、どこか気持ちが釈然としない。そのうちに別のグループから声がかかり、そちらに顔を出してみると、そこでは死者の生者に対する圧倒的な優位性を主張していて、人肉を食べることを勧められ、激しく拒絶はするものの、結局口にしてみると少し解放されたような気持ちになるが、ゾンビだという理由から同僚に疎まれて勤め先を解雇され、新しい勤め先を探そうとしてもゾンビだという理由で面接に落ちる。その頃、元カレのジョッシュは公共奉仕と称して暴力集団の一員となり、無害なゾンビをさらっては乱暴狼藉を働いていたが、自分で殺したアンジェラのストーカー行為を未練たらしく続けていて、アンジェラがあちらやこちらで集会に参加したりしているので勝手に嫉妬心を煽りたて、ジョッシュの通報によって死者たちの集会は襲撃を受け、アンジェラはあわやというところで過激な死者集団によって救出されて今度は怪しい儀式に放り込まれ、一方、死者に反撃されて壊滅状態に陥った人間側は自分で自分を殺して死者集団に潜り込んで最後の攻撃を敢行し、血まみれの大乱闘がおこなわれ、アンジェラはついにジョッシュと対決して本音を語り、自宅に戻って鏡に自分の姿を映し出して自分を少し肯定する。かなり低予算の自主制作映画である。とはいえ、脚本はよく練り込まれ、出演者もこのクラスの映画としては水準以上の演技をこなし、演出、撮影、編集、音声などで技術的な問題がときおり目につくものの、全体としてのモチベーションはきわめて高い。拾い物。 ラストハザード [DVD]
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(1968) Night Of The Living Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ 死者が蘇り、人間を襲うようになったので、郊外に取り残された人々は一軒の家に集まって生き延びようと試みる。終末的なプロットはうまいし、ドアの外でただならぬことが起こっているという雰囲気もよく出ていた。きわめて低予算ではあるものの、以降の流れの起点となる記念碑的な作品である。 ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド スペシャル・エディション [DVD]
ゾンビ(1978) Dawn Of The Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ 死者がよみがえって人間を襲って食べ始めるので、死者との戦いに疲れたSWATの隊員はTV局のクルーとともにヘリコプターに乗って都市を逃れ、郊外に到達して死者に占領されたショッピングモールを発見し、そこから死者を駆逐して自分たちのための安全な場所を確保するが、そこへ暴走族が襲いかかり、暴走族がこしらえた突破口から死者の群れがなだれ込み、仲間もまたゾンビとなってよみがえり、生き延びた者はあふれる死者を前に新たな突破口を切り拓く。残酷描写だけのゲテモノ映画ではなくて、いちおう作家性を備えた作品である。ただ、ストレスを表現するのに全員でチェーンスモークするだけ、というのは、もしかしたら芸がないような気がする。 ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]
死霊のえじき(1985) Day Of The Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ よみがえった死者の勢力の前に文明は事実上崩壊し、地下に設けられた軍事基地ではわずかに残った兵士たちとわずかに残った科学者が代わり映えのしない対立を続け、マッドサイエンティストは死者の再教育を試みる。『死霊のえじき』とはひどい邦題だが、ここまでのシリーズの中ではいちばんの出来だと思っている。人間はあまりにも醜いので、どうかするとゾンビのほうが人間よりも人間らしく見えるのである。ただ、ストレスを表現するのに全員でチェーンスモークするだけ、というのは、もしかしたら芸がないような気がする。 死霊のえじき 完全版 [DVD]
ランド・オブ・ザ・デッド(2005) Land of The Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ 生き残った人類はひとつの都市を要塞化し、金持ちはモダンなタワーで暮らし、貧しい人々はスラムに押し込まれ、傭兵たちは周辺の町をまわってゾンビを殺しながら食料などを集めている。町の支配者カウフマンがデニス・ホッパー、そのカウフマンに与して上昇志向を見せるチンピラがジョン・レグザイモ、そのあいだに立って良心らしきものを代表するのがサイモン・ベイカーである。ゾンビのほうは何やら少し賢くなって武器を使い、リーダーシップを発揮する死体が現われ、仲間が破壊されると嘆きを叫び、ときには寒空の下で白い息を吐き出して、それでは全然死んでない。ゾンビ映画のロケを寒いところでしてはいけない、ということであろう。キャラクターは成立しないまま投げ出され、社会対立も人種対立(人間対ゾンビ)も未消化のまま、ドラマは最後まで低調に終わる。『ゾンビ』のリメイクである『ドーン・オブ・ザ・デッド』に見えたような視覚的なダイナミズムもなければ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』のような一歩先へ進めたひねりもない(ロメロにあるとは思わないが)。凡作である。 ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]
ダイアリー・オブ・ザ・デッド(2007) Diary of the Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ ピッツバーグ大学の学生たちが卒業制作のために山に入ってホラー映画を撮っていると、死者が動き出して人間を襲っているというニュースが入るので、それまで卒業制作の映画の監督をしていた学生がカメラを抱えて記録を開始し、仲間がゾンビに襲われていても助けるのを拒んでカメラを回し続ける。またしても一人称視点だが、後半、カメラが複数になり、監視カメラの映像も加わり、編集され、音楽が入れられていることが劇中で明言されている点で 『クローバーフィールド』や『REC』のような映像とは大きく異なる。報道メディアの映像による情報の歪曲についての批評性がどうやら起点に置かれ、そこから分岐して現われるインターネット上の画像の主観性に対する批評性も加えられ、登場人物もゾンビへの恐怖に動かされて、というよりも、もっぱら批評的に行動するため、とにかく批評的な映画になっていはいるわけだけど、それが面白いかと言うと話がいささか異なってくる。ただ、よくわからないところにもぐり込んだ 『ランド・オブ・ザ・デッド』 に比べるとロメロの映画の原型に近いような気もしないでもない。 ダイアリー・オブ・ザ・デッド プレミアム・エディション [DVD]
サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009) Survival of the Dead 監督:ジョージ・A・ロメロ 『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』で追い剥ぎをしていた州兵が仲間とともに島に渡ると、その島ではオフリンの一家とマルドゥーンの一家が宿命的な対立をしていて、ゾンビの問題でも一方は処分する、もう一方は共存をはかるということで鋭く対立することになり、頑固さではいずれ劣らぬ双方の家長を筆頭に殺し合いを始めると、これがなにしろ田舎のことなので見た目にはまるっきりの西部劇になるものの、対立の起源が一度も明示されない上に当事者のモラルも素通りしてしまうので、対立という表層だけがなんとなく浮いているという有様になり、本来なら見えてくるはずの煮詰まった様子が見えてこない。あきらかにコメディを狙った瞬間がいくつか見えるが、それも成功しているとは言い難い。 サバイバル・オブ・ザ・デッド [DVD]
ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖(細菌兵器に襲われた町) (1973) The Crazies 監督:ジョージ・A・ロメロ 細菌兵器を輸送中の輸送機が墜落したか何かで小さな町が汚染される。バイオハザード宇宙服に身を包んだ陸軍の兵士が町を占領するが、細菌に感染した住民はすでに凶暴化しつつあった、というような話で、それを淡々としたドキュメンタリー調に仕立て上げている。英雄不在の時代が色濃く反映され、そこにロメロ風の虚無感が加わってそれなりに見ごたえがある。 ザ・クレイジーズ [DVD]
ランゴ(2011) Rango 監督:ゴア・ヴァービンスキー 不慮の事故で砂漠を横切るフリーウェイに投げ出された孤独なカメレオンはタイヤの礎となったアルマジロの示唆を受けて水に焦がれる町を訪れ、そこで大言壮語をおこない、食物連鎖の頂点にあるタカを偶然の力で倒すので、住民の信頼を勝ち取り、町長の甘言に乗って町の保安官に任命され、町から失われた水を取り戻すために自警団を率いて砂漠を進み、陰謀の存在に気づいて正体を暴かれ、つまるところはほかの誰でもないという自分自身を砂漠に映し出された幻影の中に発見する。マカロニ・ウェスタンにオマージュをささげたきわめて構築性の高い寓話であり、おそらくはゴア・ヴァービンスキーの最高傑作である。立体感にあふれて無限の厚みを備えた映像は3Dといったギミックをまったく必要としていない。ほとんど実写と見紛うほどの表現はCGによる映像としては稀有のものであろう。カメレオンに扮したジョニー・デップはここのところで最高の仕事を残し、ネッド・ビーティはあのロッツォに続いて恐るべき悪役をこなし、ビル・ナイはあの声で巨大なヘビとなって登場し、ハリー・ディーン・スタントンは特徴のある鼻をそのままに凶悪なネズミとなって現われ、バンジョーで変奏された『ワルキューレ』に乗ってコウモリの大群が空を覆う。ハンス・ジマーの悪乗りぶりがかなりすごい。これは美しい映画である。