レッド・ステイト Red State 2011年 アメリカ 93分 監督:ケヴィン・スミス アメリカのとある田舎町の色気づいた高校生三人がネットで交接の機会を得て町のはずれにあるファイブ・ポイントという土地に出かけていくと、トレーラーハウスから現れた後家風の中年女が三人を迎え、ビールを一本二本と飲ませると色気づいた高校生男子はたちまち昏倒、突如として現れた男たちの手で檻に入れられ、クーパー牧師が率いる原理主義者たちの教会へ運ばれ、折しもその聖堂ではラップにくるまれたゲイが処刑されている最中で、これが自分たちの運命かと悟った高校生たちは脱出を試み、一方、異変に気づいた保安官は助手をクーパー牧師の教会へ派遣、保安官の弱みを確保しているクーパー牧師は非情にも助手を射殺して保安官を脅すので、保安官は州警察への連絡の手段を絶たれるが、それならばATFに、ということでATFに連絡すると、かねてからクーパー牧師を監視していたATFは地元係官の指揮下に武装部隊を派遣、同行した保安官の軽率な行動から銃撃戦が始まり、作戦失敗による批判を恐れたATFは証人も含めて関係者全員の抹殺を指示、いよいよ銃撃戦が激しくなり、色気づいた高校生も良心に目覚めた狂信者の娘もどこかへ消え、空からは黙示録のラッパの音が轟いてくる。 それぞれの「狂信」で自動化した人間が右往左往するというかなりあられもない内容で、監督は『ドグマ』のケヴィン・スミス。2011年のシッチェス映画祭でグランプリを受賞しているらしい。それなりにしっかりとした話法でずるずると横滑りしていく語り口は気持ちがいい。
レッド・ファミリー Red Family 2013年 韓国 99分 監督:イ・ジュヒョン ソウルの郊外住宅で暮らす夫婦と娘、夫の父親の四人家族が実は北朝鮮の潜入工作員で、家族を演じながらあっちで軍事施設を撮影し、こっちで脱北者を殺害し、というようなことをやっているうちに隣の家のどうしようもない口喧嘩の数々が放っておいても聞こえてくるので、隣家の問題になんとなく介入していくうちに、察するところ南傀儡の堕落した資本主義の感化を受け、そこはかとなく疑問を抱いているうちに偽装のはずの家族の結束が高まり、そこへ仲間に不測の事態が起こるので事態を打開するために独自の判断で行動したところ祖国に重大な損害を与える結果を招き、監視員が現われて一家全員に死刑を宣告する。 『ジ・アメリカンズ』もこのくらいのテンポならいいのにな、というくらいにテンポが速いが、かなりざっくりとした仕上がりで、雑なところをテンポで押し切っているという感じもしなくもない。『ジ・アメリカンズ』もそうだけど(アメリカで偽装して諜報活動しているソ連のスパイの家の向かいにFBIの一家が引っ越してくる)こういう内容はコメディにしないとどうしても悲惨なことになってくるし、そうなるとまったく救いがない。結末はそこをなんとか保留しようと試みているが、たぶん少々舌足らずであろう。主人公一家よりも下町で板金屋をしている工作員のエピソードのほうが面白そう。
アーロと少年 The Good Dinosaur 2015年 アメリカ 93分 監督:ピーター・ソーン トウモロコシを栽培している農家の次男坊の少年が生活における恐怖心を克服できないまま成長に二の足を踏んでいると川に落ちて激流にもまれてはるか遠方の地に流され、そこで出会った動物に助けられて家を目指して歩き始めて、途中でさまざまな苦難に出会いながらも少年は動物と力をあわせて切り抜けていく。 隕石がはずれて恐竜が大絶滅しなかった地球での話なので、トウモロコシ農園を営んでいる一家は竜脚類(アパトサウルス?)、旅の途中で出会う世捨て人のようなのがスティラコサウルス、牧畜を営んでいるのがティラノサウルス、そのティラノサウルスの牛を盗む悪党どもがラプトル、なにかと絡んでくる流れ者の悪党集団がなんだかよくわからないけど翼竜で、主人公と旅をして、なにかとワンコな活躍をするのが人間の子供。ティラノサウルスの意外な設定と活躍ぶりは面白いが、少年向け西部開拓史読み物にありそうな話を特殊な背景に置き換え、ただそのまんまやっている、という感じで、仕上がり自体は悪くはないものの、なにかひどく古めかしい。ただCGによる水の表現には息を呑んだし、Photoshopかなにかでカレンダー用に加工したような世にも美しい自然景観をゼロから起こして動画にして、というのをまざまざと見せられると、かかった手間の数をつい想像してめまいがする。